季節性情動障害(冬期性鬱病)

「秋〜冬」落ち込み、「春〜夏」は元気
特に注目されているのは秋から冬にかけて気分が落ち込む「季節性感情障害」(冬季うつ病)である。
この病気の存在が初めて認識されたのは、1982年にアメリカから報告された患者のケースである。
16年もの間、毎年冬になるとうつ病にかかっていた男性が、「明るい照明(2000ルクス)を朝夕浴び
たところ、うつ病が治ってしまった」というのである。これは日照時間の長さを、冬型から夏型に人工的
に変えたことになる。この報告をきっかけに研究が広げられ、「光療法」の効果が確認された。季節性
感情障害の定義は次のようなものである。

・重いうつ病の症状(国際診断基準による)があること。
・2年以上続けて、秋から冬にかけてうつ病になり、その間の春と夏には完全に回復すること。
・症状が感情障害以外の精神病(精神分裂病、神経症など)のよるものではないこと。
・季節のほかには、明らかな心理的あるいは社会的な誘因があること。

この基準で調査したところ、いくつかの特徴的なことが明らかになった。
・若い女性に多い。
・過眠、過食、炭水化物渇望(穀類や甘いものがほしくなる)
 その結果、体重が増える(普通のうつ病では不眠や食欲低下をきたすのと逆)。
・北(高緯度)の地域ほど発症率が高い。
・近親者にうつ病が多い。
・高照度光による療法が有効である。
10年繰り返した発病すっきり消えた
私たちも全国の30施設と協力して、この病気の共同研究を進めているところである。私が経験した典
型的な患者のケースを紹介しよう。

彼女は18歳のときから10年間、毎年秋から冬にかけてうつ状態に陥り、留年や休学をしたこともあっ
た。そんな彼女が途中ただ一度うつ病を経験しない年があった。それは研究のためにインドネシアで
冬を過ごしたときであった。彼女は1991年の秋、例の通りに発病して間もなく光療法を始めた。その
効果は劇的で症状はおさまり、この療法を続けることで翌年の春まで再発せずに過ごすことができた。
光療法は「治療であるとともに予防にもなる」ということである。しかも、「また調子が悪くなっても、光療
法がある」という安心感からであろう、次のシーズンからは光療法をしなくても発病せず、毎年調子よく
冬が過ごせるようになっている。

光療法のメカニズムはまだ明らかではないが、最も有力な考え方は「それが生態リズムによい影響を
及ぼす」というものである。「電気のない時代ならともかく、夏も冬も同じ時刻に寝たり起きたりしている
今日、「明」と「暗」の時間は季節によって変わったりしないのに…・」と思われるかもしれないが、太陽
の光とふつうの人工照明の光は強さが全然違うのである。メラトニンというホルモンは生態のリズムの
状態(位相)を知るよい指標で、その分泌は昼間は抑制されていて、夜になると活発になる。リズムが
夜の位相にあるとき、生態に光をあてメラトニンの分泌を抑制する実験をすると、人の場合は夜の室
内の明かり(200から400ルクス)程度では抑制がかからない。2500から3000ルクスといった強い
光によって分泌が抑制されるのである。

普通の人にも季節の波がある
寝ている人に強い光を当てれば目を覚ますように、目を閉じていても明るさは感じている。睡眠の後半
から明け方にかけて、高照度光を浴びることを日々続けると、体温の上昇が始まる時刻や、メラトニン
分泌のピークが早まる。つまり、生態リズムの位相が「前進」する。季節性感情障害の患者のメラトニ
ン分泌パターンを調べると、分泌開始・終了の時刻が正常な人より遅く、こうしたことから、「リズムの
位相が後退している」と考えられている。

このような患者に朝、光療法を行えば、位相が前進して正常に近ずく。このように、「生態リズムの位
相を調節することが治療に結びつく」と考えられている。ただ、位相が前進しても症状が治らない例が
まれにあり、この病気のメカニズムは、「リズムの遅れだけでは説明できない」とする考えもある。最近
は、光が自律神経系の活動を活発にし、それが治療に結びつく、という説も挙げられている。われわ
れが、臨床時間生物学研究会を中心にして行った全国調査で、このタイプのうつ病には、予備群がい
ることがわかった。すなわち、うつ病とまではいえないものの、秋から冬にかけて、精神状態や体調が
不安定になる人たちである。

一般の人を対象に調べてみると、約8人に1人が、季節性感情障害と同じような季節性変動を示すの
である。それも、季節性感情障害の発生率が北の地域ほど高いのと同様、予備群も、調査した4地点
(札幌、秋田、鳥取、鹿児島)で、北の地方ほど存在の割合が高かった。予備群についての調査は海
外でも行われており、スイスでは、日本でのわれわれの調査結果(約8人に1人)とほぼ同じであり、
ニューヨークでは、実に4人に1人と大変に高い。人間の精神というと、何か高尚で、物質的なレベル
とは隔絶したようなイメージを持つ人も多いかもしれない。しかし、このように人間がヒトに進化するず
っと前から続いている地球昼夜の長さの季節変動に、いまでも'素朴に'影響される面があることは事
実である。

リズム異常を4原則で予防する
リズムの乱れとの関連が注目される病気として、季節性感情障害と並んで、睡眠、覚醒リズム障害が
ある。これはふつうの不眠とは異なり、睡眠の量が不足するのではなく、社会生活にマッチした時間
帯に眠ることができないのである。これには2つのタイプがある。睡眠の時間帯が、毎日少しずつ遅く
にずれていってしまうのが「非24時間睡眠覚醒症候群」。一方、睡眠の時間帯は固定しているのだが、
一般の人から見ればとんでもない時間に寝たり起きたりしているのが「睡眠相後退症候群」である。
まだ正確な率は明らかではないが、睡眠、覚醒リズム障害の患者に接していると、やはり秋から冬に
かけて、これらの障害の程度が深刻化する印象を受ける。実際、そのような例の報告もされている。

医学にとって重要なのは予防である。精神、神経系の病気、あるいは病気というほど深刻でなくても、
好不調の波に、リズムの異常が関係し、それが特定の季節に悪化する、ということであれば、それを
承知して事前の手を打ちたいものである。季節性感情障害と睡眠、覚醒リズム障害は、ともに生態リ
ズムの異常が関係していると思われる。特に後者では、体温、ホルモン分泌など、生態が持つ各種の
日周リズムを同調させることが、予防につながると考えられる。もし、季節性感情障害も同様にリズム
の同調障害だとすれば、同じ予防法が有効かもしれない。現在の時間生物学の知識を応用して、私
は次のような、日常生活における「リズム障害予防法4原則」を提唱したい。
1. 規則正しい生活
2. 午前中の日光浴
3. 午前中の運動
4. 朝食を欠かさない

「1」については説明には及ぶまいが、あまり規則正しい生活も味気ないものである。「2」から「4」は、
いずれも生態リズムの同調因子として重要なものである。「現実的でない」などと簡単に諦めず、「バ
ナナ1本と牛乳だけでもよいから朝食を食べ、朝の光を浴びながら、少し先の停留所まで速めに歩い
てから通勤のバスに乗る」など、できることから工夫をしてはどうだろうか。また、日常生活で何か興味、
関心の対象を持ったり、充実感を抱いたりすると、睡眠やリズムに好ましい影響が出ることがある。
つまり、張りのある生活をする、ということで、これを5項目に加えることもできる。

「木の芽どき」・「枯れ葉どき」について説明してきたが、躁病については、夏に多いという報告が多い。
「暑さのせいで…」という言葉が当たるかどうかはともかく、「木の芽どき」という言葉は、文字どおりの
意味で真実の一面をとらえているとともに、人間の精神活動に存在するさまざまな季節変動を、代表
的・象徴的に言い表した言葉ととれば、その意味するところは深い。こうした季節変動を知れば、予防・
治療のための本人の対処法、医師による治療に役立つだけでなく、変動のしくみを明らかにすることで、
病気の本質に迫ることにもなるだろう。

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